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入浴中の事故の防ぎ方とは?浴槽が無ければ溺れない!?

昨年12月6日、中山美穂さんが自宅の浴室で亡くなっているところを発見されました。
検視により「死因は入浴中に起きた不慮の事故」と判明しました。
最後のコンサートになってしまった12月1日のビルボードライブ横浜でも元気に2ステージをこなし、
亡くなった当日もビルボードライブ大阪で2ステージ行う予定になっていました。

この大変ショッキングな事故をきっかけに、もう一度入浴中の事故を深刻にとらえ、リフォーム会社として考えてみたいと思います。

■入浴中の事故の現状

産経新聞によると、入浴中の浴槽での事故は「救急搬送数のデータから年間約1万9千件程度と推定した研究があるが(中略)過小評価と考えられる」と日本医師会雑誌で取り上げられているそうです。(※1)

さらに、消費者庁によると、令和5年にこの入浴中に浴槽での事故で亡くなった「65歳以上の高齢者」は6,541人にもなります。(※2)

また、鳥取県では詳しい集計が出ています。
令和5年に浴室・脱衣室で発生した救急事案件数は545件ありました。最も少ない8月には17件(高齢者13件・高齢者以外4件)でしたが、最も多い12月には82件(高齢者68件・高齢者以外14件)にもなり、寒い冬に多発する事故ということがわかります。
そのなかで亡くなる方は毎年100名前後です。人口53万人の鳥取県で100名亡くなっているという事実から、かなり身近な事故・死因であると言えます。

しかも、入浴中の死亡は、欧米に比べ日本は10倍の頻度で起きています。(※3)
なぜ、こんなにも入浴中に亡くなってしまうのでしょうか?


■事故の原因はヒートショックではなかった

入浴中の事故=ヒートショックによる心筋梗塞や脳梗塞による病死、または意識障害による溺死ではないか、と言われてきました。
ところが近年の研究では、入浴中の事故の原因の大半は熱中症であると結論付けられています。
(※4)この研究をされた千葉科学大学の黒木教授によると、事故の対策は『入浴時間を気にして、湯温41℃での30分以上の全身浴を避けることだけで大半の入浴中の事故を防ぐことができると考える』そうです。
つまり、熱いお風呂に長く入ることで熱中症になり溺死すると言えます。
特に高齢者に事故が多い理由として、断熱性能が低く寒い住宅に暮らしていて、入浴によって体を温めることが習慣になっている、入浴中の体温の上昇に気づきにくいことも考えられます。

■お風呂をリフォームすると入浴中の事故は増えるのか?

ユニットバスをリフォームした場合、 浴槽の湯が冷めづらくなる(高断熱浴槽、自動追炊き機能)くつろぎやすい形状の浴槽になる(肩湯、ジャグジー機能も付加可能)浴室内の室温が高くなる(天井・壁・床の断熱材、暖房機)

などの機能が加わることで快適性が向上し、意識をしないと入浴時間が長くなりやすくなるのではないかと推測できます。
私たちリフォーム会社がお客様に新しく快適な浴室を提供することで、入浴中の事故=熱中症を増やしてしまっている可能性が否定できません。

■リフォーム会社がすべきこと

①お客様に対し、入浴中の事故=熱中症が非常に多いことを伝えるとともに、事故を防ぐ方法を重要事項として説明して不安を解消させる

・食事直後・飲酒後の入浴は控える

・入浴前に浴室、脱衣室を暖める

・入浴前後に水分補給をする

・お湯の温度は41℃以下

・浴槽につかる時間は10分まで

②浴室内に時計と温度計を設置してもらう

③冬でも体が冷えないように、家の断熱性能向上の提案をする

④高齢者世帯には浴槽レス浴室(シャワーユニット)も提案する

TOTO、タカラスタンダード、パナソニック、LIXIL等、住宅設備メーカーも浴槽レス浴室を発売しています。
その中でも、LIXILにはアクアタワーやボディハグシャワーという従来のシャワーよりも体を温めやすい高機能製品があり、積極的に取り入れていくべきでしょう。

■浴槽が無ければ溺れない!

すでに国交省では浴槽レス浴室のバリアフリー基準に関する研究が始まっています。
例えばガスコンロがIHヒーターになれば火災の恐れが無い、石油ストーブがエアコンになれば火災の恐れが無く、一酸化炭素中毒にもならないといったような過去に経験した生活の変化が近い将来起きるかもしれません。
「浴槽が無ければ溺れない!」

浴槽レス浴室に注目していきたいと思います。

【LIXILアクアタワー】

【LIXILボディハグシャワー】

※1 産経新聞(2025年1月27日)
※2 消費者庁 コラムVol.12高齢者の事故―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―
※3 産経新聞(2025年1月7日)
※4 入浴事故の危機管理:なぜ、入浴事故が起こっているのか(千葉科学大学危機管理学部 医療危機管理学科教授 黒木尚長 2018年)

文/菅原克弘